ニコン NIKKOR Z MC 50mm f/2.8
ニコン製のミレーレス一眼は他社に比べてマウント径が大きく、短いフランジバックの恩恵を最大限に生かしたＺレンズの光学性能はどれも素晴らしい描写力を持っています。「NIKKOR Z MC 50mm f/2.8」名の通り、等倍のマクロ撮影ができるマイクロレンズ(※ニコンではマクロレンズをマイクロレンズと称します)ではありますが、近接撮影だけでなくスナップ撮影やテーブルフォト、遠景の風景写真など様々なシーンで優れた描写力を発揮するオールラウンダーなレンズです。Z 6IIに装着して、様々なシーンで作例を撮影しました。
歴史を感じさせる教会を通りかかり、さっとスナップしました。焦点距離50ｍｍの画角はスナップ撮影との相性は抜群。全長約66mm、質量約260gの小型軽量なので、軽快なスナップ撮影が楽しめそうです。
どっしりした重厚感を感じる外見ではありませんが、撮影した画像の緻密で優れた解像力からこのレンズは高性能な描写力を有していることを物語ってくれます。コスパが高いというよりも、この値段でこの性能が、と驚かされるレンズです。
会津若松城のお堀沿いに咲く美しいタチアオイに目が留まり、赴くままにシャッターを押しました。
コンパクトなレンズを装着していると、重い機材を構えるときの“どっこらしょ”感がなくなり、さっと機材を被写体に向けられる身軽さが心地よくも感じます。
コンパクトなレンズを装着していると、重い機材を構えるときの“どっこらしょ”感がなくなり、さっと機材を被写体に向けられる身軽さが心地よくも感じます。
被写体から2ｍ～3ｍぐらい離れた焦点距離での細微な解像力は申し分ありません。
時を刻んできた石垣の浸食や色づいた苔、絡まるツタとその影などまるで絵画の様に写し出してくれました。
時を刻んできた石垣の浸食や色づいた苔、絡まるツタとその影などまるで絵画の様に写し出してくれました。
マイクロレンズではありますが、遠景の解像も細かく描写します。天守閣の最上階から見下ろした光景もご覧の通り、規則正しく細かに敷き詰められた瓦屋根を細微に、樹木の葉や標識の文字などもくっきりと写し出しています。
等倍撮影ができるマイクロレンズを携帯していると、つい花のクローズアップ撮影がしたくなり、会津若松から帰京後、都内の植物園へ。
最短撮影距離0.16ｍで等倍撮影が可能なので、花などの接写に力を発揮します。被写体に接近するマイクロレンズ特有の大きく柔らかいボケが美しく、通常レンズより立体感を感じる描写で一層花の美しさを引き立ちます。
最短撮影距離0.16ｍで等倍撮影が可能なので、花などの接写に力を発揮します。被写体に接近するマイクロレンズ特有の大きく柔らかいボケが美しく、通常レンズより立体感を感じる描写で一層花の美しさを引き立ちます。
カメラ：
Nikon Z 6II
絞り値：f/4.5
露出時間：1/160秒
ISO：100
露出補正：-0.7ステップ
露出モード：絞り優先
茶室入り口飾られたキリンソウ。竹筒の花瓶に挿した可憐な花に寄ってみました。
F8まで絞り込むと更にシャープになります。良好なコントラストが作り出す印影が画面に深みを感じさせ、アンスリウムの赤い花びらも鮮やかに発色してとても美しいです。若い時は見向きもしなかった花ですが、いまではマイクロレンズで接写するのが楽しくなりつつあります。
葉上の雨粒に可能な限り近寄り近接撮影です。キリっとエッジが引き締まりシャープな輪郭でピントの合った雨粒が浮き上がり、マイクロレンズとしての基本性能の高さを確認できます。
余談ですが、筆者は葉の上で転がる雨粒を見るたびに詩人タゴールの「草の葉に宿ったひとしずくの露に全宇宙が映し出されている」という言葉が頭に浮かびます。
カメラ： Nikon Z 6II
余談ですが、筆者は葉の上で転がる雨粒を見るたびに詩人タゴールの「草の葉に宿ったひとしずくの露に全宇宙が映し出されている」という言葉が頭に浮かびます。
カメラ： Nikon Z 6II
絞り値：f/9
露出時間：1/50秒
ISO：500
露出補正：-0.3ステップ
露出モード：絞り優先
標準レンズ「50ｍｍ」の描写には望遠レンズの高い圧縮効果も広角レンズの強いパースもありませんが、肉眼に近い自然な雰囲気で被写体の魅力を引き出せるストレートな表現力が持ち味なのです。
焦点距離の基本となるレンズだけに性能の良し悪しがはっきりわかりやすいのですが、このレンズの再現性は文句なしに素晴らしい。
焦点距離の基本となるレンズだけに性能の良し悪しがはっきりわかりやすいのですが、このレンズの再現性は文句なしに素晴らしい。
被写体を探して次は柴又へ。手水鉢に注がれる水がはじけ飛ぶ瞬間を近接撮影でクローズアップしてみました。誕生したばかりの水の泡って、こんなにもしっかりした粒の形をしているのですね。誕生してあっという間に消え去ってしまう刹那な水泡をクリアに写し出す近接撮影も面白さです。周辺の光の反射のボケをよくみるとわずかに２線ボケが認められますが、気にならないレベルです。
庭園内の鏡の様に澄み渡る池に反射する樹木を撮影してみると、反射ではなく樹木そのものをストレートに撮影たかのようにクリアに写りました。ヌケが良くクリアでシャープな画像を再現できる光学性能の高さを改めて実感しました。
微細な再現力の高さ。マイクロレンズの鋭い描写力は被写体を選ばす魅力を再現してくれます。
住宅地を歩いているとブロック塀の穴に差し込こまれた手作りで暖かみ溢れる風車を見つけました。
焦点距離が50ｍｍであっても近接ができるマイクロレンズは明るい中望遠レンズ並みの柔らかく大きな背景のボケ味を出すことができます。ふんわりした描写で暖かみを感じる雰囲気を写し取ってみました。
焦点距離が50ｍｍであっても近接ができるマイクロレンズは明るい中望遠レンズ並みの柔らかく大きな背景のボケ味を出すことができます。ふんわりした描写で暖かみを感じる雰囲気を写し取ってみました。
日中降り続けた雨が止んで、ふとベンチに残った小さな水たまりを見ると、高層ビルの時計台が映り込んでいます。色々アングルを変えながら印象的に写り込む角度を探しました。
マイクロレンズを使った撮影はアングルを探すだけでなく、被写体との距離感をも探しながら、ベストアングルを探し出す楽しみがあります。縦横斜め上下に加えて、近寄るか引くか、被写体との距離感も探る撮影は時としてクリエイティブな気持ちを大いに刺激されます。楽しみが無限に広がる、所有する価値ある１本ではないでしょうか。
マイクロレンズを使った撮影はアングルを探すだけでなく、被写体との距離感をも探しながら、ベストアングルを探し出す楽しみがあります。縦横斜め上下に加えて、近寄るか引くか、被写体との距離感も探る撮影は時としてクリエイティブな気持ちを大いに刺激されます。楽しみが無限に広がる、所有する価値ある１本ではないでしょうか。
