SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary
「常に持ち歩け、かつ持ち歩きたくなる存在で創作の直感に応える」がコンセプトのスタイリッシュなデザインの「SIGMA Iシリーズ」。今回は中望遠レンズの「SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary」で撮影をしてきました。
ピント面のシャープな切れ味と開放値F2.8が作り出す前後のボケ味で90mmでも充分被写体を浮き上がらせることができます。手前に写し出された大きなボケと奥のやや落ち着いたボケに挟まれたベンチがシャープに描写されることで、ふっくらと立体的な雰囲気が漂います。コンパクトなレンズですが、高精度グラスモールド非球面レンズが組み込まれ、高い解像感とボケ味の美しさに満ちた画を撮影することができます。
35mmと50mmの中間に位置する、まさにスナップのための焦点距離だな、と感じます。
カメラ:
α7R IV
絞り値:f/2.8
露出時間:1/1000秒
ISO:250
露出補正:+0.3ステップ
露出モード:絞り優先
50mmが普段目で見ている光景を切り取る画角に近い焦点距離とすれば、90mmは少し離れた位置を見つめた時に感じる画角に近い。ライカのズミクロン90mmがスナップで活躍するように、このレンズもスナップ撮影や旅行などで自分の視点で出会った光景を切り取ってくれる1本になってくれることは間違いないでしょう。
カメラ:
α7R IV
手持ちで夜景撮影するのに開放値F2.8ではギリギリの明るさではありますが、なんとか頑張ってトライしてみました。撮影した画を拡大してみると、鳥の糞害を防ぐため張り巡らされた金網の小さな網目が細微に写し出されていることが確認できます。少し離れた距離からの夜景撮影でここまで細微に描写できるは、レンズを通して伝わる画像がα7R IVの高解像力に応えられる高解像力であるからです。SLDガラス5枚を含むレンズ群によって軸上色収差が大幅に抑えられており、ライトアップで照射されている色が滲まずスッキリ写っています。
最短距離は50cm。マクロレンズの様な接近はできませんが、旅先で気に入った被写体に寄って雰囲気を壊さずにアップ写真を撮る用途には十分のような気がします。京都の錦市場で撮影した鮎、“鮮度が良く美味しそう”と感じる雰囲気が十分伝わってきます。
重なり合うように並ぶ屋根瓦の質感を細微に写し出すためF11まで絞り込んで被写界深度を深くしました。中望遠域の90mmではありますが、撮影位置から屋根までの距離があるため奥までピントが行き渡って屋根瓦を細微に描写しています。単焦点レンズの光学性能は遠景撮影での解像力に違いがあります。コンパクトにまとまったレンズですが、シグマの持ち味であるシャープな画像はいかんなく発揮されています。
開放値F2.8なのでとろけるような大きなボケ量はありませんが、90mmの圧縮感とピント面のシャープな描写で被写体を効率よくふっくら浮き上がらせます。レンズ本体はコンパクトなサイズにまとまった、圧縮効果を生かした表現も十分堪能できる中望遠域の性能は充分です。ポートレートも十分こなせる力量のあるレンズです。
とろけるようなボケではありませんが柔らかく自然な雰囲気を感じるボケ量で、ナチュラルな雰囲気を損なうことなく被写体をトレースします。
灯篭の合間から顔を出してこちらを見ている若い鹿が可愛らしくて、瞳にピントを合わせて狙ってみました。撮った画を見ると、90mmの画角に灯篭と鹿が収まりバランスが取れています。ズームレンズではなく90mmという単焦点レンズを用いる面白さは、余計な被写体を排除して撮影者が見て感じた光景をシンプルにまとめ上げることではないでしょうか。
ゴツン、と鈍い音を立てながら何度も頭を激しくぶつけ合う鹿の喧嘩。おとなしい草食動物とはいえ間近で見ると物凄い迫力に満ちていて圧倒されます。90mmの画角で両頭の首までをアップにしてみました。きめ細かく写し出された体毛、削られた角の根元の質感、怒りに満ちた争う鹿の瞳、頭から首にかけての細微感はα7R IVの高画素数に充分対応できる性能をこの小さなレンズ持っているからだと、実感させられました。
旅先で中望遠レンズを携行していると、普段は気にすることもなく見過ごす光景からも新たな発見や閃きを感じます。ミラーレス専用で常用できるコンパクトなサイズ感は取り回しがよく、ストレスなく構図決めに専念できます。